第5話『父、進化する』(パパ視点again)
- 痛みが消えた日
鍼灸を受けて数日後——
いつもなら、目を覚ましてからも「よいしょ……」と慎重に起き上がるのが日課だった。
無理に動こうとすれば、腰にズキッと響く痛み。
一度で起き上がれずに、少しずつ身体を動かしながら時間をかけて起きるのが当たり前だった。
——なのに、今日はスッと起きられた。
「お、今日は起き上がるのがスムーズだ……!」
(マジか……こんなに違うのか……)
しかも、歩くたびに感じていた腰の重だるさもほとんどない。
(なんでもっと早く鍼灸行かなかったんだ……)
- 家族の反応
リビングに行くと、妻と息子が朝ごはんを食べていた。
「おはよう、パパ!」
「パパ、おはよ〜!」
「おう、おはよ。」
椅子に座るとき、無意識にゆっくり動こうとしたが、驚くほどスムーズだった。
それを見た妻が目を細める。
「……動きが軽いね?」
「まぁな。正直、こんなに楽になるとは思わなかった。」
「ふふ、それは良かったね。」
すると、息子が箸を置いて、キラキラした目でこっちを見た。
「じゃあ、パパ、もう肩車できる!?」
「いや、まだリハビリ中だからな……!」
即答したが、息子はむくれる。
「えー?でも、チクってしてもらったら楽になるんでしょ?」
(チクって……鍼のことか……)
「確かに楽にはなるけど、すぐ無理したらまた痛くなるからな。」
「えー……つまんなーい。」
そんな息子を見て、妻がクスッと笑う。
「パパはね、ちゃんとケアしながら強くなるんだよ。」
「ふーん……じゃあ、チクってしないとダメ?」
「違う、チクってする前に、普段からストレッチとかをしておくのが大事なんだよ。」
「ふーん……?」
(よし、今のうちに教育しておこう……)
- はじめてのセルフケア
「パパも、ストレッチ習慣つけたら?」
朝食の後、妻がスマホを見せてきた。
「ほら、腰痛予防のストレッチ動画。鍼灸の先生も言ってたでしょ?『普段のケアが大事』って。」
「……まぁ、確かに。」
「どうせまた肩車するんだから、事前に準備しとかないと。」
「……俺、肩車確定なの?」
「うちの子の性格を考えて?」
「……」
妻のドヤ顔が腹立たしい。
「まぁいい。せっかくだし、やってみるか。」
———そして、ストレッチ開始。
① 腰を丸めるストレッチ
② お尻の筋肉を伸ばすストレッチ
③ 太ももの裏を伸ばすストレッチ
……やってみると、意外と気持ちいい。
「お、これ、地味に効くな……」
「でしょ?毎日続けたら、もっと楽になるよ。」
「……よし、習慣にするか。」
腰痛持ちになった自覚はある。
だからこそ、再発させたくない。
(これからは、ちゃんと身体のメンテナンスもしないとな……)
- そして、肩車のリベンジ
それから2週間後——
週に1回の鍼灸とストレッチを毎日続け、腰の調子は万全だった。
天気のいい休日、公園で息子がまた言ってきた。
「パパ、肩車して!」
「……よし、乗れ!」
久しぶりに腰を落とし、息子を持ち上げる。
(よし……大丈夫だ!)
「わーい!高い!」
風が気持ちいい。
息子のはしゃぐ声が、いつもよりクリアに聞こえた。
「パパ、今日は大丈夫?」
「おう!でも、毎日はできないからな!」
「えー!なんでー!?」
「ちゃんとケアしないと、また壊れるからな!」
「そっか……じゃあ、パパ、ちゃんとチクってしに行く?」
「チクっとするのは最終手段だ!!」
——笑いながら、公園の青空を見上げた。
エピローグ
それから、定期的にストレッチを続けることにした。
月に一回は、鍼灸院でメンテナンスも受ける。
「無理をする前に、ケアをする」
今までは「大丈夫」が口癖だったが、これからは違う。
「まだ大丈夫」じゃなくて、「今のうちにケアしよう」。
そのおかげで、今では肩車をしても腰の痛みを感じることはない。
メンテナンスさえ続ければ、大好きな息子と、いつまでも全力で遊べるはずだ。
——そう思いながら、今日もストレッチをするのだった。
【完】