第3話『うちの夫が限界オタクな件』(ママ視点)
1.夫の異変、秒でバレる
玄関のドアが開く音がして、「おかえりー」と声をかけた瞬間——
(ん?なんか歩き方が変?)
ちょっとぎこちない動きに、すぐにピンときた。
「……パパ、何その歩き方?」
「ん?普通だけど?」
「その顔で言う?」
子供が「ねえママ!」と元気に近寄ってきた。
(ああ、やっぱり。)
「今日、パパがね——」
「パパ、腰痛そうだったよ。」
……ん?いつもの言いつけとは、ちょっと違う。
「パパ、大丈夫なの?」
心配してる、ってほどじゃない。
でも、子供なりに「なんかいつもと違う」と思ったみたい。
私の顔を見て何かを察したのか、息子が純粋な眼差しを夫に向けて
「パパはちゃんと診てもらったほうがいいって。」と言葉にした。
その言葉にさすがの夫も撃沈していた。
まぁ、息子から言われたら返す強がりもないわよね。
2.夫、病院に行く
「で、何があったの?」
「いや、ちょっと肩車しすぎたかも……」
夫は、ゆっくりとソファに近づき、慎重に腰を落とした。
痛みをかばいながらそっとソファに座る姿を見て、あ、これは結構ヤバいやつだなと確信した。
「まぁ、さすがにこれは病院行こうかなと思ってる。」
「お!珍しく素直!」
つい驚いてしまった。
いつもなら「いや、寝れば治るだろ」とか言い出すのに、今回は自分から病院に行くと言っている。
夫は腕を組んで、少し考え込むように首を傾げた。
「……なんか今回は、ちょっと違う感じがするんだよな。」
「違う感じ?」
「うん、いつもなら、しばらくしたら楽になるのに……今回は、ずっと重だるいっていうか。」
夫がここまで言うのは珍しい。
やっぱり、よほど痛いのだろう。
「そっか。でも、まずは病院でレントゲンでも撮ってもらったら?」
「うん……そうする。」
「で、どこ行くの?」
「まず○○整形外科行って、骨に異常がないか診てもらう。何日か様子見ても変わらなかったら整骨院にも行ってみる。」
「整骨院?どこ行くの?」
「○○整骨院。会社の先輩に、腰痛持ちならそこがいいって聞いた。」
「あそこの先生評判いいもんね」
「うん。結構スポーツ系の人も通ってるみたいで、腰の治療に詳しいらしい。」
——夫は整骨院で施術を受け、コルセットを勧められた。
でも、やっぱり違和感が残るらしい。
3.夫、ついに決意する
帰宅した夫はソファに座り、腕を組みながらぼそっと言った。
「……鍼灸ってさ、どこに行けばいいんだろうな。先生に『鍼灸もいいかも』って言われて……。」
「ふーん……」(やっとここまで来たか。)
「じゃあ、私が通ってるところに行ってみる?」
「え、ママ、鍼灸行ってたの?」
「うん、もう3年くらいね。」
夫は目を丸くした。
「3年!?そんなに!?」
「そう。最初は体調悪くてしんどかったけど、今は月1回のメンテナンスだけで済んでるの。」
「そんなに続けてたのか…」
「先生に勧めてもらったのなら、ちょうどいいタイミングかもね。これを機会に、自分の身体のメンテナンスについて考えてみるのもいいんじゃない?」
私はスマホを開いて、いつも通ってる鍼灸院のオンライン予約ページへ。
「さて、予約入れるね。」
「ちょ、ちょっと待って、どう説明するの?」
「んー、いつも診てもらってる先生だから、ちゃんと分かってくれると思うけど……」
私は入力しながら、夫にも説明する。
「とりあえず、最近腰を痛めて、整形外科を受診後、整骨院に数回通ったけど、まだ違和感があるってことと……」
「あと、鍼灸初めてだからビビってるってことも?」
「それは自分で伝えて(笑)」
入力が終わり、送信。
「よし、予約取れたよ!」
夫は隣でスマホを覗き込んで、苦笑いしている。
「なんか……もう、逃げられないなこれ……」
「ふふ、私はいいと思うけど。知らない世界を体験してみるのもいいんじゃない?」
こうして、夫の【初・鍼灸体験】が決まった。